赤ちゃんの肌は、キメが細かくみずみずしいと思われていますが、肌の水分量や血流量、表面の形状などを実際に測定してみると、発達途上であるため、肌の機能はまだ未熟だということが分かります。赤ちゃんの肌は、角質層のアミノ酸量や表皮の脂質量などが少なく、環境の変化の影響を受けやすいのです。すべすべとしてシミやシワはありませんが、肌は荒れた状態に近いのだそうです。ベビー用のクリームを使うことによって、肌の状態が改善されたという報告もあります。
肌は成長とともに機能が完成して、若者はピチピチとしたハリのある、きめ細かな肌になります。シミやシワも少なく血管は丈夫ですが、皮腺や汗腺の活動も盛んなため、脂性肌になりやすい傾向があります。その後、加齢によって皮脂腺や汗腺は衰え、皮脂、トリグリセライド、スクアレンなどが減少し、またケラトヒアリン顆粒の減少とともに天然保湿因子も減少し、乾燥肌になっていきます。しかし細胞間脂質においては、セラミドはさほど減少しないようですが、コレステロールは減少すると言われています。
自然老化とは?
また加齢により表皮のターンオーバーが遅くなるため、角質層細胞が大きくなります。肌のキメは荒くなり、皮丘、皮溝の凹凸が浅く不鮮明になり、毛穴も大きくなっていきます。肌は衰えて表皮が薄くなり縮緬ジワができるようになり、老人性のイボや、シミ、白斑なども増えてきます。血管も弱くなるため、老人性血管腫や老人性紫斑などもできやすくなります。このように皮膚の機能低下による細胞数の減少が原因で、皮膚がだんだん薄くなっていくのを皮膚の自然老化と言います。
光老化の影響は紫外線
これに対して紫外線などの影響による肌の老化を光老化といいます。高地では紫外線量が多く、光老化が進むと言われています。肌の凹凸だけでなく、老人性の色素斑、白斑が顔や手に出て、代謝の低下による肌の黄ばみもみられます。本来5~10層並び構成されている有棘層は2~3層になり、表皮真皮の間の波状の凹凸がなくなって、真皮乳頭層の毛細血管が広がり紅いスジが見えるようになってしまいます。加齢とともに肌には弾力が無くなり、脆くなって手足には皮下出血による老人性紫斑が増えていきます。
老化については様々な説が唱えられています。遺伝情報を担うDNAは、放射線、紫外線、活性酸素、化学物質変異原により、常に傷つけられています。紫外線による主なDNAの損傷はチミンまたはシトシンのピリミジン残基に生じ、これらの損傷は、ヌクレオチド除去修復機構と塩基除去修復機構によって修復されるのですが、加齢にともなってDNAの修復機構の働きが低下すると、DNA損傷が突然変異や過剰なアポトーシス(細胞の死の様式の一つ)を引き起こし、皮膚の老化を加速させるのではないかと考えられています。
ミトコンドリアの機能低下が光老化を招く
またミトコンドリアの機能低下も光老化の原因の一つではないかとされてます。日光に当たった皮膚のミトコンドリアDNAの欠損は、日光に当たっていない皮膚より多く、その原因は、ミトコンドリアにあるスーパーオキシドディスムターゼにより、過剰に作られた過酸化水素が、核とミトコンドリアを酸化的に傷付けるためではないかと考えられているのです。最終糖化生成物とは、還元糖とタンパク質のアミノ基との反応により生成するものですが、糖尿病などで慢性的に高血圧が続くと、この最終糖化生成物が生成し、動脈硬化などを引き起こす要因になっているのではないかといわれています。糖化したコラーゲンが本来の可動性を失い皮膚の硬化やシワを作りやすくなるのです。
自然老化と光老化の違い
皮膚の老化は、光老化によるものと、自然老化によるものとでは、外観や肌理、表皮や真皮における状態も違っています。自然老化の皮膚の外観はハリは失われているものの、滑らかですが、光老化の場合、皮膚はゴワゴワとしていて、シミや深いシワができるのが特徴です。自然老化の場合表皮は薄くなりますが光老化の場合は厚くなります。真皮においてもエラスチンやグリコサミノグリカンなどの増減に違いがみられます。また自然老化の場合細胞の炎症像はみられませんが、光老化の場合は細静脈周辺に炎症細胞の浸潤がみられます。