素肌の働き

手鏡を見ながらニキビを指さす女性

皮膚の働きの中で最も重要なのは、乾燥から生体を守ることですが、他にはも様々な働きをしています。まず皮膚が外部の刺激から生体を守るために、どのような働きをしているかについてお話しましょう。皮膚の一番外側の角質層にはケラチン線維があり、これは機械的な刺激に対して強い抵抗性を持っています。常に刺激を受けていると角質層は厚くなり皮膚は強く硬くなって行きます。真皮におけるコラーゲンやエラスチンも適度に絡み合い、弾力性を持っていて、皮下脂肪組織とともに外部の刺激から生体を守っています。

また最も外側にある皮膚は外部からの異物の侵入を防ぐ役割も果たしています。化学物質であるアルカリなどに対しては、角質層の乳酸や、脂肪酸がこれを中和し、肌が常に弱酸性に保たれるようになっています。細菌やウイルスに対しても、肌は防御機能を持っていて、ケラチノサイトは、抗菌ペプチドという天然の抗菌剤を、合成することができるのです。また、皮膚にはT細胞が常在していて、皮膚のどこかがウイルスに感染すると、それに対する識別能力を持ったT細胞が表皮に定着し、優れた力を発揮します。このT細胞のシステムを働かせるのはランゲルハンス細胞で、これらの防御の機能は互いに補い合って働いています。皮膚は異物を排除する力を持っている反面、アレルギー反応を起こすこともあります。この防御機能は精神的ストレスには弱く、ストレスによってランゲルハンス細胞や、抗菌ペプチドも減少するのではないかと考えられています。

さて皮膚の大切な役割の1つに、体温調節もあります。生きるために必要なエネルギーを食べ物の燃焼によって得ている動物は、体内で大量の熱を発生させています。そのため体温を一定に保つには、身体から熱を放出する必要があり、呼気による放熱が全体の約30%で、残りの70%は皮膚表面から放熱されていると考えられています。汗は気化熱として身体の熱を奪い体温を一定に保ちます。体温が高くなると毛細血管が拡張して、皮膚は弛緩して表面積が広くなり放熱しやすくなります。逆に気温の低下により体温が下がると、血管は収縮して立毛筋も収縮し、鳥肌がたち皮膚の表面積は狭くなり熱の放出を少なくします。なお皮膚でごく僅かな呼吸もしていますが、皮膚呼吸だけで、生命を維持することはできません。

その他に皮膚は身体の最も外側にあるため、外部の温度感覚や触覚、痛覚や圧覚などを感じて脳に伝える役割をしています。皮膚表面の神経終末器の作用点は感覚点と呼ばれていますが、これらの感覚点は一様ではありません。感じる場所と感じない場所があり、冷点は温点より感覚点は多く、触点はさらに多く、痛点は最も多いと言われています。それは痛みを感じることが生存に必要だからだと考えられています。また、触覚受容器はカプセルのような構造を持っていて、ほとんどの触覚的情報を捉えることができると考えられており、、触れたときに感じる痛みや温感などは、神経の末端部が、そのまま露出して終わっている自由神経終末で知覚しているといわれています。構造を持つ受容器には滑りや圧力変化を検知するマイスナー小体、形や垂直方向の圧力、質感などを感知するメルケル盤振動数の高い刺激を感知するパチニ小体などもあります。そして、毛のある皮膚には、これらの他に圧覚と低周波域の振動を受容する触覚盤、毛が曲がるのを感知する毛包受容器などがあります。

また皮膚の機能は、無毛部と有毛部で大きな違いがあります。 有毛部は自己の皮膚感覚に敏感で、手のひらや指など無毛部は、触れた対象物の性質や形状を探る働きに優れています。これらの情報は脊髄、脳幹、視床から大脳皮質へ伝えられています。

そのほかにも皮膚は、エネルギーを中性脂肪として蓄えるなど、栄養分を保持する働きもしています。

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